青い海と空のみちのく八戸から・波動はるかに 第4回 エミシの背中

 小さな先住民集団はたちまち蹴散らかされ、兵隊はもともと農民を兼ねているからその一部は好適地を収奪・開墾しあたらしい移民集落を作る。そうやって北へ北へと進出する。穏やかな暮らしを保っていた無防備な先住民から見れば侵略に他ならない。ハリウッド映画の西部劇のような、言ってみれば北部劇があった。坂上田村麻呂は北部劇のスター、アメリカ西部劇のジョン・ウエィンやゲーリー・クーパーだった、かな。つまり、時には騎兵隊長、時には開拓団長となる。“西部劇”と“北部劇”の構図は殆ど共通している。此の2例だけでなく、大体新しく進出してきたものと先住民との関係は共通していて、その上、さらに歴史の記述は、侵略側の一方的な自己弁護的解釈によって成り立っているのだ。

 平和で穏やかな生活を営んでいたものが突然その生活を破壊される。そして歴史記述については、侵略者の論理が優先され差別的な叙説をされている。アメリカインディアンと呼ばれている人たち、アイヌの人たちは似た運命をたどってきたに違いない。

 東北地方に残る無数のアイヌ語と考えられる地名から考えてもこの広い地域にアイヌ人の豊かな文化・生活が営まれていたことは確かなことだ。私の名乗る苗字上斗米(カミトマイ)も、どこかアイヌ語の響きが感じられる。エミシがアイヌであるかないかは別にして、私はもう暫く、エミシの背中をそっと追い続けてみたい。

上斗米治史 (ペンネーム;小出治史)
静岡市浜松天竜区出身。静岡市、横浜市でポーラ化粧品研究所員、七宝制作、保険代理店経営。日本パントマイム研究所研修生時、大野一雄、土方巽に傾倒。佐々木満、辻征信と3人で舞踏カンパニー「黒馬団」活動ほか。写真家土田ヒロミ氏、七宝家土田善太郎氏、画家佐藤泰生氏と長年交友。川崎のシニア野球3チーム時代二刀流で活躍。202312月より青森県八戸市移住。八戸市でもシニア野球2チームに加入、始動。2024年春より多文化・多世代・多言語交流館「みらいえchez Kamitomai」ギャラリー館長。八戸市鴎盟大学入学48期生。著書;「六月の田園」2008年マンマル社刊。

(モルゲンWEB2024)

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